昭和63年(1988年)、排水機場は鉄筋コンクリートの強固な建物と共に設備が更新され、近年の局地的な集中豪雨にも対応しうる極めて強力な排水能力を持つようになりました。さらに平成20年(2008年)、揖斐川上流に日本最大の徳山ダムが完成したことにより、輪之内付近においては揖斐川の水位が警戒水位に達すること自体無くなる状況となってきています。輪之内においても、福束輪中提は引き続き大切に保存され、年に一度の堤防締めきり訓練も続けられてはいるものの、一方では堀田は消滅し、水害に備えた高石垣の水屋の撤去も年を追うごとに進むなどして、輪中としての特徴は失われつつあります。

「輪中」はこの土地で生活を営むために必要な手段でなくなっていることは、何十年も前から明らかであり、今は、土地が培ってきた「文化」として残るのみです。その文化については、このマニアクスの項で紹介してきた通りで、町内の各所に痕跡が残るほか、片岡資料館などを訪ねることで味わうことができます。また、ここで述べてきたような時代背景によって発生したお祭りや民話が町にはたくさん残されていますので、これらを訪ねて味わうことも、また一興でしょう。

なお、輪之内が誇る田園地帯では、現在、「御膳米」と銘打った品種のお米が積極的に栽培されています。これは、輪之内が徳川家の天領であることをヒントとして名付けられたものですが、一般の水稲と異なる点として、「より深い水」に「より長くひたす」という、輪中的な稲作の伝統を受け継ぐ品種となっています。田んぼに水を張るのは5月。その水は9月に入っても水田をなみなみと満たしており、刈り取りは11月と、ちょっと変わったお米ですが、味は折り紙付きです。

輪之内を探訪し、400年以上におよぶ輪中文化に思いをはせながら、御前米で作ったおむすびを楽しむ・・・などという楽しみ方はどうでしょうか?
当地の先人たちが積み重ねてきた情景が、きっと、あなたの目にも浮かぶことでしょう。